先日、声優の井上真樹夫さんが亡くなった。
私は8歳の頃から、かなり重いレベルのルパンファンだ。
未だ定期的にシリーズを舐めまわす様に鑑賞するし、泥酔すると終始口調がルパンになる。
40歳を超えた今でも、変わらずにルパンを尊敬しているのだ。
そんな中、昨日の報道である。
因みに今年は原作者のモンキーパンチ先生も亡くなっている。
が、しかし。
正直、パンチ先生よりも、真樹夫さんの死の方が重い。
何せ私が愛してやまないルパン三世2ndシリーズを支えた名優にして、
五ェ門と言えば真樹夫さんの声しかない。
五ェ門と言えば真樹夫さんの声しかない。
現在は浪川大輔さんが見事に五ェ門を継いでいるものの、やはり真樹夫さんの様に落ち着いた、深みのある五ェ門にはほど遠い。
ごく私的な趣味だが、私が五ェ門(勿論真樹夫さん時代)の台詞の中で最も好きなのは、名画「カリオストロの城」に於ける後半部分、実にカリオストロ伯爵が時計塔の時計に挟まれて絶命した後、観念したカゲ(敵キャラ)は戦意を喪失し、戦っていた五ェ門にこう言う。
「もう終わりだ。斬れ」
それに対し、五ェ門は相手に背を向け、斬鉄剣を鞘にしまった後、こう言ったのだ。
「無益な殺生はせぬ」
話が少し飛んでしまうが、真樹夫さんが亡くなったという報道を見た瞬間、私は直ぐにあの日の事を思い出した。
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1995年の春、私は浪人一年生になった。
川崎駅前の早稲田予備校に通いながら、バンドとパチンコに熱中していた堕落した時期でもある。
そんなピカピカの浪人生なりたての4月、予備校帰りにシネチッタに寄り、一本の映画を観た。
これだけでピンときた貴方とは、とても仲良くできそうだ。
正確に言えば、本編には出ておらず、予告編が最期の出演となっている。
映画を観ている最中、違和感と苛立ちが酷く、まともに観ていられなかったが、内容が中々良かった為、奇跡的に最後まで席を立つことはなかった。
それにしてもクリカンルパンの違和感は凄まじく、モノマネで見る分には何とも思わなかったのだけど、ルパン役に座った彼の芝居はモノマネそのもので、誰が聞いてもルパン三世にはなりきれていない、中途半端なモノマネ芸でしかなかった。
映画がエンディングを迎え、エンドロールが流れる中、私はスクリーンを凝視し、泣きまくった。
人目も憚らず、泣きまくった。
人前で声を出して泣いたのは、あの時だけだ。
泣いた理由はただ一つ。
「永遠のルパン三世 山田康雄さん ありがとう」
そんな追悼テロップが、不意に流れたからに他ならない。
また、山田さんの葬儀に於ける、納谷悟朗さんの弔辞もまた哀しかった。
「おい、ルパン! これから俺は誰を追い続ければいいんだ!? お前が死んだら俺は誰を追いかけりゃいいんだ!!」
納谷さんは山田さんの遺影に向かい、銭形の口調でそう叫んでいた。
先日、真樹夫さんが亡くなった際、現ルパンファミリーの面々が、続々とお悔やみの言葉を発表したのをニュースで見たのだけど、正直どのコメントもオールド・ファンには刺さらなかった。
しかし、次元役である小林清志さんのコメントには泣かされた。
「五ェ門おまえもか! 残されたのは不二子ちゃんとオレ次元と二人だけになっちまった。斬鉄剣も泣いている」
小林さんは死ぬまで現役を貫くと宣言している為、今でも次元大介だ。
そんな彼にとって、オリジナルメンバーの死はこれで三度目となる。
ルパン、銭形、五ェ門。
その寂しさたるや、想像を絶するレベルだ。
しかし人は誰しもいつか必ず死ぬ。
寂しいが、故人は思い出として人の心の中で生き続ける存在と化す。
私の中でルパンファミリーは尊敬すべき面々であり、大人の見本でもあり、さらには永遠の憧れなのだ。
そしてまた、彼らを演じた名優達もまた、それに近しい存在と言っても過言ではない。
どうか安らかに眠って下さい。
天国でルパンと銭形の三人で、日本酒でも呑みながら、長い旅の思い出話に花を咲かせて下さい。
色々な気持ちを込めて、感謝を伝えたいです。
井上さん、本当にありがとうございました。
rest in peace.