天命、そして伝説へ。

アラフィフのサラリーマンライター『椎間板』が、終末までに高所得者へ上り詰めるまでのプロセスについて書き綴っていくという、完全自己満ブログです。

私的音楽ファイルVol.2「BOØWY」。

↑このマークのオイルライター、持ってたなぁ(無論パチモノ

 

衝撃を受けて目覚める。

音楽に限らず、何かを始めるきっかけになった印象的な出来事は、多くの方が経験していると思う。

 

とは言え、私が音楽を始めたきっかけは、さほど衝撃的ではなかったと記憶している。

 

発端となったのは14歳の時のこと。或る日野球部の先輩から、不意に一枚のCDを勧められたのだ。それは、日本が誇る伝説的ロックバンド「BOØWY」のライブアルバム「GIGS」だった。

 

いきなりライブ盤とは中々にレアなのかもしれないが、同バンドの魅力はライブを以って他にない。

 

ガッツーンとキタのは、一曲目(OPSEが入るので、正確には2曲目になるが)の『BAD FEELING』である。クリック音とギターリフの静かな始まりから、一気にリズム隊が入ってくる瞬間に、ブルっと震えたのは今でも覚えている。

 

ちなみに同ライブは、BOØWYに於ける4枚目のオリジナルアルバム「JUST A HERO」を引っ提げた全国ツアーの中から、初となる武道館公演の音源である。スリーピースとは思えない程にアンサンブルが美しいのだけど、後にキーボードの音が付け足されていたり、かつ修正が入っているなど、編集されていたことを知ってちょっと残念だったなぁと。

 

さらに同アルバムはノーカットではなく、後に未編集の完全版が出ており、そちらの方が臨場感があってさらに良い印象です。但し、初心者は編集版の方が圧倒的に聴きやすいあたりは否めないが。

 

 

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BOØWYのライブ盤は解散後に何枚かリリースされているのだが、基本的には今回ピックアップした「GIGS」と解散後のライブを編集した「LAST GIGS」の2枚が有名だと思う。特に後者は伝説的なライブとして知られており、二日分のチケットは予約開始10分でソールドアウトし、文京区の電話回線がパンクしたという逸話が残っている。ちなみに、BOØWYはオープン間もない東京ドーム(当時はまだBIG EGGと呼ばれていた)でコンサートを行った3組目のアーティストであり、第一号は美空ひばり(単独ではミック・ジャガー)となっている。

 

もう一点LAST GIGSにまつわるエピソードを挙げると、当時は同ライブの映像が発表されておらず、全貌を知るのは行った人のみ。解散後にファンになった方達は、どうしてもLAST GIGSをノーカットで堪能したいと懇願していたが、所属レーベルはその発売について一切触れることがなかった。そこで暗躍したのが、海賊盤を発売していた小売店に他ならない。もちろん盗聴した音源なので無許可になるのだけど、これがもうアホみたいに売れたのである。当時は海賊盤を専門に扱うCDショップがいくつもあったのだけど、時代の流れと共に徐々に減っていき、現在ではもう絶滅危惧種状態になっている。

 

実は私も当時横浜駅付近(現在のドンキ・ホーテあたり)にあった某レ●ファンでLAST GIGSの海賊盤CDを見かけたことがある。無論すぐ様購入しようと思ったのだけど、値段を確認して速攻諦めてしまった。一枚のCDに10万円は出せないよね。

 

ちなみに、同ライブのノーカット盤が発売されたのは2019年のこと。「LAST GIGS〜ORIGINAL〜」という名前で4枚組(2日分)になっている。31年の時を経て、オリコン初登場3位という結果を見るに、同バンドがいかに伝説的であるかを窺い知ることができる。

 

 

   

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日本のロックシーンを語る上で必ず使われるのが「BOØWY前・BOØWY後」という表現である。BOØWYの登場によってシーンは大きな変貌を遂げ、バンドブームの波に乗って本格志向の才能溢れるアーティストが何組も台頭した。それは単にBOØWYを模したビートロックバンドが増えたということではなく、ロックの様式美から固定観念が排除され、ボーダレスになったということに他ならない。

 

ちなみに、私がBOØWYを聴き始めた頃は既に解散後だったにも関わらず、コピーバンドは星の数ほど存在したし、ビギナーギタリストの多くがボディーに白のマジックで幾何学模様を施し、ボーカリストは小指を折ってマイクを握っていたものだった。故に、BOØWYコピーバンドを組みたいと思った際、メンバーに困ることは無かったと思う。私が高校生の頃にヴェルヴェット・アンダーグラウンドのコピーをやりたいと思った際は、結局一人もメンバーが集まらなかったが・・・。

 

しかし、BOØWYは紛れもなく「どメジャー」な存在であり、往年のロックファンからすれば、アイドルであり売れ線と思われているあたりは否めない。故に、ミュージシャンがBOØWYファンであると堂々と言えない雰囲気があった。まあ、私は臆せず堂々とカミングアウトしていたが。

 

中学三年頃から洋楽にハマり、特に70年代のイギリスのロックに傾倒する様になってからもBOØWYは変わらず聴き続けていたし、影響を受けたバンドの一つとして確固たる地位を築いていた。そして、貪る様にロックを聴く生活から離れ、テクノやアンビエント、さらにはクラシックを主食とする様になった現在に於いても、BOØWYが特別な存在であることに変わりはない。

 

 

なぜ、そこまで人を魅了したのか?

 

 

その理由は個々で異なるだろうが、私が思うBOØWYの魅力は計三点ある。

 

まずは楽曲の良さである。まるでフランス文学の様に難解な歌詞と、コンポーザーであるギタリストの布袋寅泰が生み出す個性的なメロディーが絶妙にマッチし、化学反応を起こした。特に布袋氏のセンスは凄まじく、数々の印象的なギターリフと、他に類を見ない「歌うギターソロ」は、今聴いても新鮮に感じる。あれ程の才能は中々出てくるものではないと思うし、今でも当時の氏を超える才能・センスを持ったギタリストはいない。少なくとも国内では皆無であると断言してもよい。思わずギターを持って弾いてみたくなる名フレーズのオンパレードもまた、同バンドの大きな魅力だろう。

 

そして二点目はボーカルである氷室京介のカリスマ性である。あのルックスにしてあのボーカルセンスは反則と言っても過言ではない。何を言っても格好良いし、どんな動きをしても格好良い。フォトジェニックの極みであり、オンリーワンのボーカリストだと思えてならない。さらに同氏の魅力は見た目やボーカルテクニックだけではなく、作曲者としての才能の高さもまた大きい。同バンドの楽曲は、前記した様にその多くが布袋氏のクレジットだが、氷室氏が作った楽曲も素晴らしい。解散後、ソロになってからの楽曲を知る方はお分かりだと思うが、氷室氏は変化することや挑戦することに重きを置いて活動していたのである。日本には無い、全く新しいジャンルを構築することを目標にしていたのかどうかはわからないが、新譜を出す毎にすっかりアップデートされていたし、その全てが斬新だったのは記憶に新しい。例えば、2006年にリリースされた氷室氏のオリジナルアルバム「IN THE MOOD」に収録されている『PAIN』という楽曲があるのだが、これは米国のエモバンド「ジミー・イート・ワールド」のカバー曲である。正直バンド自体も日本ではさほどメジャーではないし、PAINも名曲だが単なるアルバム内に埋もれた一曲でしかない。何より、氷室がエモパンクを歌う?という不一致な感じに驚いた。しかしそのカバーは素晴らしく、本家には出せない楽曲としての完璧なまとまりがあったし、キーを下げたことによってメロディーの怪しさが増長された気がしてならなかった。また、ソロ後期はスタッフに外国人が増え、ステージ裏やレコーディングの際に氷室氏が流暢な英語でやり取りしている様を見る度に、努力の程を窺い知ることができ、改めてその格好良さに胸が熱くなったものだ。

 

最後はフロント二人の危うい関係性である。ベースの松井氏とドラムの高橋氏のファンには申し訳ないが、BOØWYに於いてリズム隊の二人は刺身のツマであり、言い方は悪いが引き立て役に他ならないと思う。つまり、BOØWYにとって氷室京介布袋寅泰のツートップは絶対的な存在であり、顔であると断言する。しかし巷では、BOØWY解散の理由は二人の不仲にあると言われている。解散後に一度も交わることがなかったあたりからもそれは正しいのだろうと思う。しかし、それでいいのだと思う。氷室氏が耳の不調で活動を終了すると発表した際、布袋氏から「最後くらい同じステージに立ちたい」とマスコミを通じて氷室氏にラブコールを送ったのは有名な話だが、氷室氏はその答えを公にしていない。恐らく、本人にもその返答をしていないと思う。それほどまでに徹底して距離を取るのは、我々一般人には知り得ない大きな理由があるのだと思うが、その際明確になったのは、音楽をビジネスと捉える布袋氏と、音楽活動を単なるエンターテイメントとしない氷室氏とのスタンスの違いに他ならず、何者にも染まらないという氷室氏の意思の強さが浮き彫られることになった。正直、BOØWYファンの中には「アンチ布袋」が多いのは確かだ。役者としての活動や、プロモーション方法など、商業的な動きが目立つ布袋氏に対し、氷室京介はメディアにほとんど出ることがない。かつて、氷室氏が清涼飲料水のCMに出ているのを見たことがあるのだけど、ただ立っているだけの地味な出演だったし、何だからしくなかった。しかし布袋氏は缶コーヒーのCMでサイボーグと化し、永瀬正敏を全力で追いかけていたが、あれはエンターティメントとして面白かったが、往年のファンとしては非常に残念だった。そんな水と油な両者の関係性も、BOØWYの大きな魅力と言っても過言ではないだろう。

 

最後になるが、私はアンチ布袋ではないし、BOØWYのリズム隊も大好きです。確かに上手いですしね。ただし、高橋まことの政治的な発言はいただけないし、布袋氏の芸能人然とした活動も見たくない。お願いだから黙って音楽だけやってよって感じかな。それと、氷室氏がソロでBOØWYの楽曲を演奏するのも嫌だった。しかし、今でもメンバーの新譜はチェックしているし、9月にリリースされる布袋氏のギタリズム7も今からとっても楽しみにしている。しかし、再結成だけはしてくれるなよと。往年の名バンドが金の為に再結成する様は見ていて吐き気がする。美しいキャリアを汚すなよと。何より、ロックファンの思い出を壊すなと言ってやりたい。

 

まあそんなBOØWY評でした。

 

今でもたまにBOØWYを聴くのだけど、その際にチョイスするのはやっぱり「G IGS」になってしまう。最初に受けた衝撃が割と大きかっただけでなく、とにかく演奏が素晴らしい。ただし、ライブとして最高に良かったのは「1224」です。ファンは『やっぱりそうだよね』と言ってくれると思うが、あんなにヒリヒリしたライブはない。知らない方に書くと、1987年のクリスマスイブに渋谷公会堂で行われたライブなんだけど、告知なくその場で解散宣言をし、終演後に暴動が起きたというこちらもまた伝説的なライブなんですが、とにかく演奏中にメンバーの笑顔が一切なく、MCもほぼないんですね。演奏もタイトで切羽詰まった空気感が凄まじくロックです。ゴルチエの衣装も格好良かったし、氷室氏のパンキッシュなヘアースタイルもアーティーで素敵でしたね。何か観たくなってきた。

 

 

という訳で、知らない方は一度触れてみることをおすすめします。

知らずに死ぬのは勿体無い存在だと思いますよ。

 

では、素晴らしい週末を。

 

 

へば。