天命、そして伝説へ。

アラフィフのサラリーマンライター『椎間板』が、終末までに高所得者へ上り詰めるまでのプロセスについて書き綴っていくという、完全自己満ブログです。

マスターキートンを流しながら。

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かつて僕が高校生だった時、スポーツバッグを斜め掛けするのが定番の通学スタイルだった様に、今の子はノースフェイスのリュックを背負うのがセオリーの様だ。

 


母校付近の畦道で、発泡酒を飲みながらしばしの休息を堪能している。

 


1本126円の発泡酒と、iQOSのメンソール。

そしてスマホからマスターキートンを流しながら、東名高速市ヶ尾インターのネオンを見つめている。

 


先週末、友人とへべれけになるまで呑んだあの晩を恥ながらも、酒を啜る手は止まらない。

 

 

 

※※※

 

 

 

高校二年生の時分、僕は至極地味なクラスメイトに惹かれた。

 


彼女はありふれた名前で、スカートの丈も校則通りの垢抜けないスタイルを常としていた。

 


一方僕は、つまらないプロ野球の賭けに負け、丸坊主の憂き目に遭っていた頃だ。

 


彼女は地味だったけど、魅力的な八重歯と大人びた雰囲気を持っており、学校での姿とプライベートでは、まるで別人と言える程キャラが異なっていた。

 


また、彼女はピアニストで、たまにアコーディオン大道芸人みたいに上手く奏でていた事を覚えている。

 


その卓越した音楽的センスから、誰もが現役で音大に進むものだと思っていた。

 


当然の如く都内の音大に一発合格したものの、彼女はそこへ入学しなかった。

 


何と、家庭教師のボーイフレンドを追って広島へ行ったという。

 


その情報を知ったのは、卒業してから半年後、実に僕がやる気のない浪人生として自由を謳歌している時だった。

 


学生時分では、愛情でもく恋心でもないと思っていた。

 


でも、異性として彼女を見ていたことは否定できず、それが恋心と知った時はもう遅かった。

 


彼女は両親の反対を押し切り、夜逃げする様に横浜を出てしまった。

 


しかし広島の大学などそこそこに、ボーイフレンドと駆け落ちし、その果てに子を授かったと聞いている。

 

 

 

※※※

 

 

 

彼女と仲良くなったのは、マスターキートンを愛読していたという共通点からだった。

 


弟の影響と言っていたが、小学生の子供に理解できる内容ではない。恐らくその家庭教師が好んで読んでいたのだろう。

 


今では彼女も40代半ば。

タイムスリップでもしない限り、地味で魅力的なあの八重歯には会えない。

 


懐古願望は日に日に強まるばかり。

それ程現在に満足できないのだろう。

 


明日を生きる気力すらないまま、僕は毎日懐古し続けている。まるでメビウスの輪の上を歩いているかの様に、負の連鎖から逃れられない今、僕の精神を安定させるのは友人と過去と安い酒である。

 

 

 

あー、明日もめんどくさいね。

 

 

 

下校時に足繁く通った、喫茶ホワイトハウスの跡地を見つめながら、引き継ぎあの頃を懐古する。

 


アイスコーヒーとレモンティーで閉店までだべり続けたあの時間は紛れもなく珠玉の時。

 


照れ隠しで吸い続けた赤いマールボロの吸い殻は、毎晩灰皿からはみ出る程だったな。

 

 

 

年を重ねるのはとても寂しい事だ。

毎年誕生日になると、身を削がれる程切なくなる。

 


畦道に通ったWi-Fiのお陰で、今夜も記憶を肴に酒が呑めた。

 

 

 

しかしトモちゃんは何処へ?

 


いつか会えたらいいね。

 

 

 

へば。