ブルースの祖、ロバート・ジョンソンのドキュメント・ムービーを観た。
彼はかつて、何の変哲もないありふれたギタリストだったそうで、おまけに技術は皆無だったという。
しかし、しばらく街から姿を消し、久しぶりに戻って来た時には、誰も弾く事が出来ない難解なフレーズを目を瞑って弾きこなす、技巧派ギタリストに変貌していたという。
にわかには信じ難いが、単なる都市伝説というには証人が多過ぎるのだ。
彼は生前、その変貌について周囲にこう吹聴していたそうだ。
『俺はクロスロードで悪魔と出会い、契約を交わした。』
と。
そして、ギタリストとしての技術と引き換えに、悪魔に魂を捧げたという発言を残したそうだ。
しかしその発言を笑う者はいなかったという。
つまり、そのくらい圧倒的な変化だったという事だろう。
何より彼が残した幾つかのフレーズは、斬新且つ難解で、ヘタクソな三下ギタリストが容易に生み出せるものではなかった。
そして事実、彼は決して多くない楽曲を残し、20代のうちに亡くなった。
恐らく彼は、血の滲むような努力を重ね、その境地に辿り着いたのだろう。
しかし、誰にでも人生の分岐点は訪れる。
僕にも少なからずあった。
全てを語るのは憚るが、幾つかある逸話から、ひとつだけ残しておこうと思う。
まあ、そのうちに。