ここ二週間で、『ナイト・オン・ザ・プラネット』を30回以上観ている。
さらに、同作品のサントラを常に聴いていたりもする。
それも、風呂に入る時以外、殆どの時間だ。
好きな作品を舐める様にじっくりと観て、聴いて、常に現実から逃げている。
長年、レクイエム候補として絶対的な地位を築いていた、パット・メセニー・グループの『last train home』。その脅威となりつつあるのが、同サントラのラスト・ソング、『the good old world』に他ならない。
とにかく最近は、狂った様にジャームッシュまみれの毎日を送っていて、それはもう20代前半に毎日・毎分・毎秒、ゴダールまみれの時間を過ごしたあの頃を彷彿とさせるレベルである。
アンチから聞かれたことがあるのだが、「ジャームッシュ作品のどこがいい?」と。
簡単に言うと、『普通だから』に尽きる。
わざとらしい抑揚がなく、終始淡々と平凡な展開が続くあの感じがたまらなく好きなのだ。
確かに、ファンタジーな小話を挟んでいる作品も多いし、コミカルで喜劇的な要素も多く盛り込まれているあたりも否めない。
でもそれは、知らぬ異国の常なのかもしれないと考えれば、なんだか上手にパッケージされたロードムービーの様にも見えなくもないだろう。
とにかく、ジャームッシュ作品の魅力は、突飛な設定なのに、意外と中身が普通という点にある気がしてならない。
風景画であり抽象画でもあると言うと訳がわからないか。
中でも、一番のお気に入りは『ダウン・バイ・ロー』で、軽く100回以上は視聴していると思われる。
単なるトム・ウェイツ好きから、ジャームッシュ・フリークに発展したという有りがちなパターンだが、若い頃からとにかく刺激を受けてきた。
タバコを吸い始めたきっかけも、実はジャームッシュ作品の影響だったりする。己が如何に薄っぺらいかを露呈してしまっているが、事実なので仕方ない。
今夜も『the good old world』を聴きながら、真夜中の散歩に出かけるつもりだ。
ここ最近は、その時間こそが唯一の楽しみだったりする。
そして毎晩懐古するのだ。
あの時代、古き良き時に戻りたいと。
未来には絶望しかないからね。
よい夜を。