天命、そして伝説へ。

アラフィフのサラリーマンライター『椎間板』が、終末までに高所得者へ上り詰めるまでのプロセスについて書き綴っていくという、完全自己満ブログです。

2024年2月12日(月)「俺はまだ、敗者ではないと思いたい」

ツイていない時はとことんツイていないものである。

 

気づけば2024年になってしまったが、私の暮らし向きは相変わらずといったところ。

 

あまりにツイていないので、アキ・カウリスマキの不幸三部作を舐めるように鑑賞している今日この頃だ。

 

「浮き雲」「過去のない男」「街のあかり」

 

正直どれもこれも素晴らしく面白い。

しかし、どれもそこまで不幸とは言い難く、まだ幸せじゃんと突っ込みたいところだ。

 

ちなみに私がカウリスマキ作品の中で一番好きなのは「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」である。あのバカバカしさがたまらない。

 

しかし、今の精神状態で笑いながら鑑賞できる自信はない。

 

で、話を戻そう。

 

カウリスマキの不幸三部作(公表されているのは「敗者三部作」もしくは「労働者三部作」という名称)とは、監督が提唱する現代の不条理を物語としてまとめたものであり、言わば社会の底辺に属する人間が転落するまでのアン・サクセスストーリーといったところだ。

 

中でも、最も好みなのは「過去のない男」なのだが、今回は三部作の締めとなる「街のあかり」をピックアップしようと思う。

 

ちなみに、「過去のない男」の劇中歌としてハマの名物バンド、クレイジー・ケン・バンドの曲が使われている。経緯は少々運命的で、同バンドのギタリストである小野瀬雅生氏は、かねてよりカウリスマキ監督の大ファンを公言しており、そんな彼がレコーディングに向かう飛行機の中でカウリスマキ監督にバッタリ遭遇、そこで自身が所属する同バンドのCDをプレゼントしたところ、何と映画の挿入歌として使われたという訳だ。そりゃ嬉しいわな。

 

で、本題に戻ろう。

 

 

※※※※※

 

 

「街のあかり」は、警備会社に勤めるあるフリーターの転落劇である。

 

ネタバレ防止の為にあらすじ程度でお茶を濁すが、とにかくこの男、人から好かれない。

無口故に強固なATフィールドを張り、周囲を寄せ付けない空気を纏っている。

 

そんな彼はカフェで出会った一人の女性に恋をするのだが、それがいわゆる「クソビッチ」であり、詐欺師集団の妾ときたもんだから、彼は瞬く間にその女に騙され、挙句窃盗犯の濡れ衣を着せられ、収監されてしまうのである。

 

この映画で私が得た教訓は「話さないと損をする」ということに尽きる。

彼はその不幸を誰にも話さず、愚痴も溢さず、言い訳すらしない。

挙句誰からも信用されず、ただ流されるまま泥沼に堕ちてしまうのであった。

 

結局彼はある女性に救われるのだけど、語らずに自身を理解してくれる存在など稀有だし、よほど運が良くないとそんな人と巡り会うことはない。

 

現実の世界に置き換えてみるとわかるのだけど、本当のことを包み隠さず話せる関係って中々ないというか、いわゆる親友や恋人レベルの人じゃないと言えないものだと思う。

 

そしてそういう関係性を築けた時点である意味恵まれていると言っても過言ではない。

 

その点で言えば私の人生も恵まれている方なのかもしれない。

 

ただ、仕事運と女運が死ぬほど悪いだけなのだろう。

 

しかしこの映画、最後の最後でようやく「転調」を迎えるのだけど、それがなければ単なる不幸自慢話でしかない。何せツイていない。腹が立つ程ツイていないのだ。初見時はヤキモキしながら観ていたものだったし、何でそうなるのだ! とカウリスマキに少し腹が立った程である。

 

でも、最後は美しかった。

 

函館山から望む夜景の如く、はたまたスレンダーな女性の風呂上がりの肢体の如く美しいラストである。

 

一見チンケな話だが、規模こそ異なれど、誰にでも平等に幸せは訪れる。

それを教わった素晴らしい作品だった。

 

未見の方は是非一度ご賞味あれ。

 

 

※※※

 

 

タバコを止めて久しいのだが、カウリスマキの映画に出てくるキャラクターはヘビースモーカーが多い。誰も彼も、空気を吸うようにタバコを吸っているものだから、つい手がタバコを持つ仕草に変形してしまう。まあ今喫煙者に戻ったら、間違いなく死に至るだろうからやらないが。

 

最後になるが、私が好きな映画は、どれもストーリーに抑揚がない。

ハリウッド映画みたいに壮絶なドラマもなければ、蕩けるようなラブストーリーも存在しない。

ただ日常の一コマを切り取り、それを編集しただけのもの。言うなればロードムービーが好みということになるのかな。

 

取って付けたような出来過ぎたストーリーなんか要らないのだ。

リアルであるということは、そういうことだ。

 

だから私が書く作品にも抑揚がない。

そうか、ウケない理由はそこなのか・・・何てとっくにわかっていたけどね。

 

という訳で、今夜はwi-fiスポットでダウンロードした好みの作品を漁るように鑑賞しようと思う。

すっかりカウリスマキの口になっているので、今夜は「パラダイスの夕暮れ」から鑑賞する予定だ。

 

しかし、カティ・オウティネンはそこまで美人でもないのにカウリスマキ映画には欠かせない素晴らしい女優だなと。もう還暦を過ぎているというのに、相変わらず魅力的なおばさんを演じているあたりが良いなぁと思う。何にしても「枯れ葉」が観たい。もう上映終わっちゃったかなぁ。。。

 

さて、そろそろ帰って寝ながら映画鑑賞といこう。

 

へば。